groovin moment.1

「地元どこ?え、北海道!遠いねぇ!」

 

街はずれの路地、当たり障りのない会話が続いている。

 

「北海道のどこ?札幌か!わかるわかる!俺も一回行ったことあったな」

「あ、ほんとですか?」

円山動物園でさ、あそこは広いねぇ」

「土地の広さぐらいしか、取り柄ありませんからね」

 

延々と続く道と、惰性の会話に、正直もううんざりしていた。

学校からカラオケまで、こんなに遠かったかなぁ?

 

「あー、あと、大きい商店街もあったような」

狸小路ですね。ラーメン食べました?」

「うん、けど味噌ラーメンて、正直どこも同じじゃない?」

「あ~、わかりますねそれ」

 

地元を好いてる奴ほど愚痴はよく垂れ流すもんだな。どこも一緒だと思う。

さて、このパーマの青年は俺の目に適う逸材か否か......

 

「はい!じゃあ新入生はぐれてないかな?部屋17番なんで、入れる人からどんどん入っちゃって~」

 

俺も、一応新入生という体で入らせてもらおう。正直ばれたらやっかまれるなんてもんじゃないけど......

年長さんから順に、デンモクが流されてくる。俺はこういう時は決まって尾崎豊槇原敬之しか入れないんだ。

 

ビジュアル系だの、ロキノンバンドだの、キャラソンだのが容赦なくぶち込まれる。読む空気など無いようである。

「......酷いな」

という愚痴は、おそらく青年諸君の怒号にかき消されているだろう。JAM PROJECTは、まあたしかに盛り上がるだろうが......でもそれを既知とするのは、どうなんだ?

 

ションベンに行く。甘い酒ばっか並んでるあの部屋に、もう用なんかないよな。お望みのものも手に入らんかったし......時間の無駄だったか。

 

或いは、と思ったんだけどな。

 

荷物を取りに行くと、そこに女優がいた。この小さな箱の中で唯一立ち、深呼吸するように、甘さと、艶めかしさと、冷やかさと、優しさと、嘲りと......あらゆる表情を映している女がいた。ようやく見つけた。俺はその子と少し話し、LINEを交換して帰った。

 

原石だ、原石だ、原石だ。この機は逃さない。あの子をこの街のシンボルにしよう。春先の夜風が軽く俺を急かす。

広告を非表示にする