墜落

洪水の中、折れた脚をかばって白地の壁にもたれかかっていると、黄色い長靴が近づいてきた。梅雨のことだった。

 

雀は巣立って間もなく不幸に陥ったわけだったが、それが幸いして、ちいさなちいさな世界を手に入れたのだった。

 

雀は夢にうなされる深く深く、底の見えない青色に墜ちていく夢だ。

雀はその青を知らない。保護された小鳥にとってそれは、もはや縁のない世界だった。

おもちゃ箱が彼の巣で、真白の青空が彼の世界だった。

不器用に跳ねて戸のそばに寄って見る。雨がやんできているようだった。

 

 

悪夢は現実となる。あんなにも優しかった少年は雀を打ちあげる。

青空に墜ちていく、墜ちていく、墜ちていく......

 

瞬間、小鳥を救うべく身を挺し受け止めた一羽の烏。

が、彼の抱擁虚しく、雀は自重で砕け散った。

烏は手厚く、弔ってやった。

 

一瞬の出来事であった。少年と烏、にじんでいく二人の間に風が吹く。

初夏のことだった。

広告を非表示にする